「CHAOS;HEAD NOAH」 感想

2010年に5pb.より発売されたPSP用ソフト「CHAOS;HEAD NOAH」の感想です。最終EDまでのネタバレがありますのでご注意ください。

 

引きこもりオタクの主人公・西條拓巳が、妄想を具現化する能力を持つギガロマニアックスのヒロイン達とともに、渋谷で起こる「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続猟奇殺人事件の裏に潜む陰謀に立ち向かう、「妄想科学ADV」。

現在まで続く科学ADVシリーズの記念すべき第1弾です。

 

 

その目だれの目?

エログロの強い作品だとは聞いていましたが、予想以上に怖かったです。

趣向を凝らしたグロ表現もさることながら、人の悪意の恐ろしさ、拓巳が追いつめられ、不安と狂気にかられてゆく様子がダイレクトに描いており、心をえぐられます。

特に七海の手首のくだりは、プレイ中本当に心拍数が上がって完全にトラウマです(笑)

そんなグロ展開の連続でありながら、最後に好きな女の子のために戦うという王道展開は燃える。ラストで物語冒頭のシーンに繋がる流れも綺麗です。

独自システムである「妄想トリガー」も面白くて、始めは「ここからここまでが妄想シーン」というのがはっきり分かっていたのが、いつしかどこまでが妄想なのかわからなくなったり、トリガーを引いてないのに妄想になったりと、拓巳の「現実」が崩れてゆく様子を見事に表現しています。

 
ルート分岐について

メインストーリーは一本道なので、1週目(「Silent sky」)で話の8割は分かります。

バッドEDである「Crying Sky」とヒロインの個別ルートは補足的な内容…なのですが、PSP版だと規制によって「Crying Sky」のニュージェネ追体験シーンがばっさりカットされていて、あまり見る意義がないのが残念。表現は抑え気味でいいので、せめて起こった出来事の説明くらい残してほしかった…。

その後「Blue sky」でとうとうハッピーエンドと相成るのですが、内容の9割は「silent sky」ルートと一緒なので、インパクトという点では今一つ。

野呂瀬とか300人委員会について語られるのかと期待していましたが、そんなことはなかった。その辺は次回作に持ち越しか、自分で考えろということなのでしょうか。

でも、ヒロインがみんな無事なのは嬉しい限りです。 

 

システムについて

面白いゲームなのですが、システム面はいまいちです。

大きな不満点は二つで、一つ目はスキップが遅いこと。共通ルートが長く、スキップの出番が多いため結構なストレス要因。個別ルートなんてスキップ時間の方が長いくらいです。

二つ目はロードが長いこと。ボタンを押してからボイスが再生されるまでに若干間があく(ことがある)ほか、妄想開始、終了などのムービー挿入時は必ず2,3秒程度固まります。

本来であれば唐突に妄想が終了する…という演出なのに、読込音で「あ、妄想終わりだ」と分かってしまうのはどうも興ざめ。

 

 

ヒロインたち

全6人のヒロインとその個別ルートの一言感想です。

 

梨深

正ヒロイン。

梨深ルートは梨深が主人公なED。最後はタクがさわやかな感じで締めているけど、プレイヤーは梨深が死んでしまったことを知っているので何とも切ない読後感です。

梨深に限らず、ヒロインの個別ルートは見事にハッピーエンドがない。ラブラブもない。いくら恋愛ADVでないとはいえ、この徹底ぶりは酷いです(褒め言葉)

 
七海

薄幸妹キャラ。

七海ルートは屈指のバッドED。そもそも、七海ルートの七海は妄想の七海で、七海ルートなのに本物の七海はほとんど出てこないという悲しみ。このルートのおにぃのヘタレぶりにはさすがにイラついたぞ…。

 
優愛

眼鏡っ子。彼女の「詰問」は癖になる。

優愛ルートは、ディソードやノアⅡは完全放置で彼女の秘密に迫る。西條君は彼女のせいでだいぶ神経をすり減らしていたけど、実は唯一希とは無関係な人。

 

あやせ

電波ちゃん。私のお気に入りヒロインです。

何と言ってもファンタズムの歌が好き。もともとテーマソングから本作に興味を持ったので、ゲームをしたのはつい最近だけど歌はだいぶ前から聞いてます。

あやせルートは数少ないハッピー寄りED。あやせの笑顔にほっこり…ですが、他のヒロインを全員再起不能にしたのはさすがだな、と。

あと、あやせはどうやって梨深と七海のディソードを手に入れたのだろう…。

 
セナ

強気キャラ。彼女も結構お気に入りです。

セナルートは「命と引き換えに世界を救う」という典型的さわやかバッドエンド。でも正直、最後のモモちゃんに全部持っていかれた感がある。

 

こずぴぃ。「ちんすこう♪」と「ぶちゅぶちゅさん」が笑える子。

梢ルートは全滅エンド。とにかく真っ赤なのでインパクト絶大。私も何かにつけて心の中で死ね死ね言ってしまう人間なので、梢の末路は教訓とします。

 

 

西條拓巳しゃんの魅力

 一貫してヘタレで、キモオタで、引きこもりで、逃げ腰で、明らかに好き嫌いの分かれるキャラですが、それでもこのゲームの一番の魅力は主人公の拓巳だと思います。

拓巳って、こじらせオタクの性情としてはかなりリアル。異様に警戒心が強くて、自分から他人との関わりを避けるくせに、いざとなれば一人が怖くて、勝手に他人に期待をよせて、それを裏切られると悪態をつく。

ヘタレすぎだろって思う反面、まるで鏡に映った自分を見せられているようなところがあって、(嬉しくないけど)多分に共感できるんです。

そして、拓巳のヘタレメンタルが分かるからこそ、数々の恐怖感に説得力があるし、ラストの覚醒が必要以上に嬉しくなる。妄想と実在の境界を描いた「chaos; head」という作品の主人公に、拓巳以上にふさわしい人物は存在しません。

妄想の存在である拓巳が誰よりもリアリティのある人間らしい人物なのは何とも不思議なものです。

 

また、拓巳を語る上で外せないのが担当声優・吉野裕行さんの熱演。

他人と喋る時のどもりっぷり、オタク語りをする時の若干早口の語り、「ふひひ」というキモい引き笑い、そのすべてがまさに「オタク」。完璧すぎて軽く引くレベルです(笑)

そこからだんだん気が狂っていく演技も素晴らしくて、本当にこの上ないくらいのハマり役。拓巳の感じる恐怖にリアリティがあるのも、このボイスあってこそです。

 

 

おわりに

プレイ時間は45時間。ストーリーは長いですが、共通ルートが多いため、3分の1くらいはスキップ時間です。

エログロとSFとオタク要素をミックスしたかなり尖った作風で、露骨に人を選ぶ作品ではありますが、完成度は高く、ハマる人はとことんハマるはず。

また、科学ADVシリーズは新作が続々出ているため、そちらにも注目です。